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教育版マインクラフトは療育にどう活用できる?学びにつながる理由と注意点

浦安市│放デイ・日中一時支援│カラフル

公開日:2023年6月2日
最終更新日:2026年8月7日

子どもたちに人気のゲーム「マインクラフト」。
ブロックを組み合わせて建物や世界をつくるゲームですが、教育現場や療育の場では、単なる遊びではなく、子どもの興味を学びや成功体験につなげる教材としても活用されています。
ただし、マインクラフトをすれば自動的に創造力や社会性が高まるわけではありません。自由度が高いからこそ、「何を目標に、どのような条件で取り組むか」によって、活動の内容は大きく変わります。
この記事では、教育版マインクラフトの特徴、研究で報告されている記憶機能との関係、療育で活用する際のメリットと注意点を紹介します。

教育版マインクラフトとは?

教育版マインクラフト(Minecraft Education)は、教育現場での利用を目的として開発されたマインクラフトです。
通常のマインクラフトと同じように、ブロックを使った建築や世界の探索を楽しめるほか、共同作業を支える機能、授業用の教材、プログラミング環境などが用意されています。
プログラミングでは、Microsoft MakeCodeを使って、ブロックを組み合わせながら命令を作ることができます。学習内容に応じて、Pythonなどを使用することも可能です。
自分が作った命令によってキャラクターやエージェントが動くため、「どの命令によって、何が起きたのか」を画面上で確認しやすいことが特徴です。

子どもの「好き」を活動の入口にできる

発達に特性のある子どもの中には、興味のない活動には取り組みにくい一方で、好きなことには高い集中力を発揮する子もいます。
マインクラフトが好きな子どもにとっては、ゲームの世界そのものが「やってみたい」と思える活動の入口になります。
最初から苦手な課題へ取り組ませるのではなく、好きなものをきっかけに活動へ参加し、その中へ学習や人とのやり取りを組み込めることは、マインクラフトを活用する利点の一つです。
ただし、好きなゲームを長時間続けられることと、必要な場面で注意を向けたり、活動を切り替えたりできることは同じではありません。
そのため、活動時間、目標、手順、終了条件などをあらかじめ設定し、「好きだから続けられる」という強みを、目的のある活動へつなげる必要があります。

自由に作るより、課題があった方がよい?

マインクラフトと記憶機能の関係について調べた研究では、取り組み方によって結果が異なる可能性が示されています。
若年成人を対象とした研究では、参加者が次のような条件に分かれて、2週間にわたりマインクラフトへ取り組みました。

  • 平坦な世界で、好きなものを自由に作る
  • 指示を見ながら、段階的に複雑な建物を作る
  • 通常の世界を探索し、出発地点へ戻る
  • 世界を探索して資源を集め、複雑な建物を作る

その結果、平坦な世界で自由建築だけを行ったグループでは、海馬と関連する記憶課題に明確な改善が見られませんでした。
一方、指示に沿った建築、空間探索、探索と建築を組み合わせたグループでは、記憶課題の成績が改善しました。特に、探索と建築の両方を行った条件では、より大きな改善傾向が報告されています。
ただし、この結果を「自由制作には意味がなく、課題を与えれば海馬が発達する」と解釈することはできません。
自由な空間探索だけでも改善が見られているため、重要なのは自由をなくすことではなく、次のような認知活動が含まれているかどうかだと考えられます。

  • 空間や目印を覚える
  • 必要な材料を探す
  • 手順を記憶して実行する
  • 完成形を予測する
  • 状況に応じて計画を修正する
  • 複数の情報を関連付ける

つまり、単に好きなものを作り続ける活動よりも、探索、記憶、計画、試行錯誤を含む活動の方が、海馬と関連する記憶機能を使う機会が多かった可能性があります。

一方で「マイクラは海馬によい」と断定はできない

別の研究では、40代の成人が1日約30分、週5日、4週間マインクラフトに取り組んだところ、海馬への依存度が高いとされる記憶課題の一部で改善が確認されました。
一方で、この研究は海馬の体積や脳活動を直接測定したものではありません。「海馬と関連する記憶課題の成績」が測定された研究です。
また、研究の対象は成人であり、子どもや発達障害児を対象にした研究ではありません。したがって、現時点では次のような表現が妥当です。

目的のある建築や空間探索を取り入れたマインクラフト活動は、海馬と関連する空間記憶や、細かな違いを区別して覚える力を使う可能性があります。

課題の設定によって、使う力が変わる

同じ「家を作る」という活動でも、条件や進め方によって、子どもが使う力は変わります。

見本と同じ建物を作る

見本を観察し、ブロックの種類、数、位置関係などを確認します。
ただ建物を作るだけでなく、細部へ注意を向ける、必要な情報を覚える、見本と自分の作品を比較するといった場面をつくれます。

条件に合う建物を作る

「窓を4つ付ける」「2階にベッドを置く」「使う材料は3種類まで」などの条件を設定します。
複数の条件を覚えながら、どのような順番で作るかを考える必要があります。

地図を見て目的地へ行く

地図や目印を確認しながら、指定された場所を探します。
現在地と目的地の関係を考える、通った道を覚える、迷ったときに別の方法を試すといった経験につながります。

役割分担をして町を作る

建築担当、材料担当、道づくり担当などに分かれ、共通の目標へ向かって作業します。
自分の考えを伝えるだけでなく、相手の説明を聞く、順番や担当を相談する、意見の違いを調整するといったやり取りが必要になります。

プログラミングで建物を作る

命令を組み合わせてエージェントを動かし、建物などを作ります。
意図した結果にならなかった場合は、命令の順番や回数を確認し、原因を考えて修正します。結果を見ながら試行錯誤できることも、プログラミング活動の特徴です。

失敗を修正しやすい環境

マインクラフトでは、置く場所を間違えたブロックを壊し、何度でも作り直すことができます。
現実の制作活動と比べて修正しやすく、変更した結果もすぐに画面へ表れます。そのため、「失敗したら終わり」ではなく、「どこを変えればよいか」を考える場面をつくりやすい教材です。
ただし、失敗への抵抗感が自然になくなるわけではありません。
思いどおりに作れず活動を中断してしまう子や、間違いを受け入れにくい子もいます。課題が難しすぎたり、指示が細かすぎたりすると、かえって意欲が下がる可能性もあります。
作品の完成だけを目標にするのではなく、途中で試したことや、修正できたことも認める必要があります。

共同作業を通した、やり取りの経験

複数人で一つの世界を作る活動では、さまざまなやり取りが生まれます。

  • 自分の考えを相手へ伝える
  • 相手の説明を聞く
  • 順番や担当を決める
  • 必要な材料や場所について相談する
  • 困ったときに助けを求める
  • 相手の作業を手伝う
  • 一つの目標に向けて活動を続ける

ただし、同じ世界で一緒に遊ぶだけで、社会性や協調性が自然に育つとは限りません。
役割や目標が曖昧な場合は、それぞれが別々のものを作るだけになることもあります。作る場所、使う材料、進め方を巡って、トラブルが起きる場合もあります。
共同作業を学びにつなげるためには、共通目標や役割を設定し、必要に応じて支援者が話し合いを仲介することが重要です。

教育版マインクラフトを活用する際の注意点

教育版マインクラフトは、すべての子どもに同じような効果が期待できる教材ではありません。
子どもの特性や使い方によっては、次のような課題も生じます。

終了や切り替えが難しくなることがある

マインクラフトは自由度が高く、「もう少し作りたい」「ここまで完成させたい」という気持ちが続きやすいゲームです。
高い集中力を発揮できる一方で、終了時間になってもやめられず、次の活動への切り替えが難しくなることがあります。
活動前に終了時刻や終了条件を確認し、「あと10分」「あと5分」など、残り時間を段階的に伝える工夫が必要です。

自由度が高すぎると、活動が固定化することがある

自由制作には、創造性や自己表現につながる価値があります。
一方で、毎回同じ建物だけを作る、探索をせず一人で作業を続けるなど、活動が固定化することもあります。
自由に遊ぶだけで、計画、問題解決、協働などを幅広く経験できるとは限りません。子どもの目標に応じて、無理のない範囲で条件や役割を加える必要があります。

共同作業がトラブルにつながることがある

複数人で同じ世界を使用すると、ほかの子が作ったものを壊す、使いたい場所や材料が重なる、作り方について意見が合わないといった問題が起こる場合があります。
共同プレイでは、活動を始める前に、やってよいこと・いけないこと、作業する場所、役割、困ったときの相談方法を確認する必要があります。

経験や操作能力の差が出やすい

マインクラフトの操作に慣れている子が活動を主導し、初心者の子が見ているだけになることがあります。
反対に、操作の難しさが負担となり、活動そのものを嫌がる場合もあります。
作品の完成度や操作の速さだけを評価せず、材料を選ぶ、計画を考える、アイデアを伝える、作業を確認するなど、操作以外にも参加できる役割を用意することが必要です。

画面の刺激が負担になる子もいる

視点移動や画面の揺れによって、目の疲れや画面酔いを感じる子もいます。
また、画面への集中が続くことで、姿勢が崩れる、瞬きが減る、休憩を忘れるといったこともあります。
利用時間を区切って休憩を設け、必要に応じて画面設定や操作方法を調整します。体調や感覚特性によっては、別の活動を選ぶ判断も必要です。

ゲーム内でできたことが、日常生活へそのまま移るとは限らない

マインクラフトの中で順番を守れた、友達と協力できた、計画を立てられたとしても、それだけで学校や家庭でも同じ行動ができるようになるとは限りません。
ゲーム内での経験を日常生活へつなげるためには、活動後の振り返りが重要です。
「今日は何を工夫したか」「困ったときにどうしたか」「友達にどのように伝えたか」などを確認し、別の場面でも使える方法として整理していきます。

カラフルでは「自由」と「課題」を組み合わせます

自由制作には、子どもの発想や自己表現を引き出す価値があります。
一方、課題型の活動には、手順、記憶、計画、問題解決など、特定の力を意識して使いやすいという利点があります。
どちらか一方だけが優れているわけではありません。
カラフルでは、例えば次のような流れで活動を行います。

  1. 今日の課題と条件を確認する
  2. 見本や地図を見て、作り方を考える
  3. 建築・探索・プログラミングに取り組む
  4. 途中で状況を確認し、必要に応じて修正する
  5. 課題が終わったら自由制作を楽しむ
  6. 最後に、工夫したことや困ったことを振り返る

活動内容は、子どもの興味、理解度、操作経験、その日の状態などに応じて調整します。
最初から難しい課題を与えるのではなく、少し頑張れば達成できる条件を設定し、「できた」という経験につなげることが重要です。

大切なのは、教材そのものより使い方

教育版マインクラフトには、子どもの興味を活動の入口にしやすいという利点があります。
一方、自由に遊ばせるだけでは、目的とする力を使わなかったり、終了や対人関係の問題が生じたりすることもあります。
そのため、マインクラフトを万能な教材として扱うのではなく、一人ひとりの目標に応じて使用する、複数ある支援方法の一つとして考える必要があります。
カラフルでは、活動時間、課題、役割、終了条件を設定し、必要に応じて支援者が説明や話し合いをサポートします。
子どもの「好きだからやってみたい」という気持ちを、「考えられた」「修正できた」「完成できた」「人と協力できた」という経験につなげることが、教育版マインクラフトを活用する目的です。

参考文献・参考資料

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