カラフル 放課後等デイサービス・日中一時支援
― カラフル式“脳の使い方”支援 ―
はじめに:「集中しなさい!」が通じないのは、脳の使い方の問題かもしれません
「集中しなさい!」と何度言ってもすぐ気が散る。
切り替えが苦手で、思い通りにならないと怒ってしまう――。
そんなお子さんを見て「うちの子は落ち着きがないのかも」と感じたことはありませんか?
けれど実は、それは努力や性格の問題ではなく、脳の使い方の違いによるものかもしれません。
放課後等デイサービス「カラフル」では、子どもたちがプログラミングや創作活動を通して、
「集中力」「判断力」「切り替え力」を自然に育てる支援を行っています。
その根底にあるのが――
脳の中の司令塔「前頭前野(ぜんとうぜんや)」をうまく働かせる支援です。
本記事では、脳科学の観点から「なぜ集中できないのか」「どうすれば切り替えられるのか」を解説しながら、
家庭でもできる“前頭前野を育てる関わり方”を紹介します。
第1章 前頭前野とは?――集中・判断・感情コントロールの司令塔
脳の最前部にある前頭前野(Prefrontal Cortex)は、人間らしい行動をコントロールする司令塔です。
| 前頭前野の主な働き | 行動の例 |
|---|---|
| 注意・集中 | 授業や作業に集中する |
| 判断・意思決定 | 優先順位を考える・選ぶ |
| 感情の抑制 | カッとなっても言葉で伝える |
| 柔軟性・切り替え | 失敗から再挑戦する |
| 社会的理解 | 相手の気持ちを想像する |
ADHDやASDなど発達特性のあるお子さんは、この前頭前野の働きがまだ未熟な段階にある場合が多く、
「やるべきことを理解していても行動が追いつかない」ことが起きます。
この時期に必要なのは、叱ることではなく“前頭前野が働きやすい環境を整えること”です。
カラフルでは、その仕組みを支援全体に組み込んでいます。
第2章 カラフル式支援が前頭前野を活発にする5つの理由
① 「考える→つくる→伝える」サイクルがある
プログラミング・イラスト・動画制作など、カラフルの活動は
「思考→実行→表現→ふりかえり」というプロセスで構成されています。
この流れで前頭前野がフル稼働します。
- 計画を立てる(ワーキングメモリ)
- 判断して進める(意思決定)
- 試行錯誤する(自己制御)
- 結果を伝える(社会的認知)
つまり、「作品をつくる」ことそのものが脳の訓練なのです。
② 「あと少しでできそう」な課題設定
難しすぎると投げ出し、簡単すぎると飽きる――。
カラフルでは子どもの発達段階に合わせて、“ちょっと背伸び”の課題を設定します。
心理学でいうフロー状態(没頭)に入ると、前頭前野が最も活発に働きます。
この「集中ゾーン」を支援者が設計することで、無理なく集中力を伸ばしていきます。
③ 感情の言語化支援(ラベリング)
活動後には「どんなところが楽しかった?」「難しかった?」とふりかえりをします。
感情を言葉にすること(感情ラベリング)は、
扁桃体の興奮を前頭前野が抑える働きを促すといわれています(UCLA, Lieberman et al. 2007)。
「嬉しい」「悔しい」「楽しかった」を言葉にする――
それは情動と理性をつなぐ練習そのものです。
④ グループでの共同制作
相手の意見を聞く、自分の考えを伝える。
この「協働」は、社会的前頭前野(Social PFC)を強く刺激します。
特にASD傾向のある子どもたちは、他者の意図を読み取ることが苦手。
でも“安心できる関係”の中で小さな協働を積み重ねることで、
相手の視点を理解する力が少しずつ育ちます。
⑤ 成功体験によるドーパミンの働き
作品が完成した瞬間や発表での拍手――この「できた!」の快感が、
脳内でドーパミンを放出し、前頭前野の神経回路を強化します。
カラフルでは「達成→喜び→次の挑戦」という循環をつくり、
子どもの脳をポジティブな挑戦モードへと導いています。
第3章 家庭でできる“前頭前野を育てる”実践ガイド

家庭でも、ちょっとした工夫で前頭前野を育てることができます。
特別な教材や難しい訓練はいりません。
「日常の中で、脳が気持ちよく働く環境」を整えることがポイントです。
1.「見通し」を一緒に立てる
前頭前野は“計画を立てるとき”に働きます。
朝や帰宅後に「今日どう過ごす?」を一緒に決めてみましょう。
例:放課後スケジュール
- 15:30 おやつタイム
- 16:00 宿題タイム
- 16:30 YouTube30分
- 17:00 自由遊び
「何を・どの順番で・どのくらい」やるかを自分の言葉で決めることが大切。
親が全部決めるより、子ども自身の“思考する脳”を使う方が効果的です。
2.感情を「言葉」で整理する
感情を言葉で表現できるようになると、前頭前野による自己コントロールが上手になります。
おすすめの声かけ例
- 「どんなところがうまくいった?」
- 「今の気持ちを一言で言うと?」
- 「次はどうしたい?」
「なんでそんなことしたの?」と責めるのではなく、
「どう思ったの?」と感情の言語化を促すだけで、脳の使い方が変わります。
3.“一点集中”の時間をつくる
マルチタスク(ながら作業)は前頭前野を分散させてしまいます。
テレビやスマホを消して、「今はこれだけ」に集中できる時間をつくりましょう。
**ポモドーロ式(25分集中+5分休憩)**がおすすめ。
ADHD傾向の子どもは「15分→3分休憩」など短いサイクルでOKです。
「集中→休憩→再開」を繰り返すことで、集中スイッチの切り替え力が育ちます。
4.「失敗OK」の空気をつくる
前頭前野は、安心しているときに最もよく働きます。
「失敗=悪いこと」ではなく、「試した証拠」と捉え直す習慣をつけましょう。
声かけ例
- 「うまくいかなかったけど、最後までやったね」
- 「次は違う方法を試せそうだね」
この言葉が、扁桃体(不安の中枢)を落ち着かせ、
再び前頭前野が働き出す“安全モード”を作ります。
5.「切り替え」の予告をする
「もうやめなさい!」ではなく、「あと5分でご飯にしようね」と予告を入れるだけで大違い。
前頭前野が「今を終えて次に行く」準備を始めます。
具体例
- 「次の動画で終わりにしよう」
- 「タイマーが鳴ったらお風呂ね」
“先の見通し”を与えることで、脳の切り替えスイッチがスムーズに動きます。
6.呼吸でリセットする
感情が爆発しているとき、最初に働かなくなるのが前頭前野です。
そんなときは深呼吸で脳を再起動させましょう。
4-6呼吸法
- 4秒吸って、6秒かけて吐く
- 「吸う」より「吐く」を長く
- 一緒に数を数えてリズムを共有
「息を整える=心を整える」は、脳科学的にも正しいアプローチです。
7.「小さな達成」を毎日つくる
前頭前野は“できた!”の喜びで強化されます。
宿題を終えた、挨拶ができた、準備が早かった――どんな小さなことでもOK。
一言添えるだけで効果大
- 「早くできたね!」
- 「昨日よりスムーズだったよ!」
褒めるより、「気づいて伝える」ことが大事。
ドーパミンが出て、脳が「またやりたい!」と感じるようになります。
8.一日の「ふりかえり」を一緒に
寝る前の3分間、「今日どうだった?」を親子で話す時間をつくってみましょう。
聞き方のコツ
- 「今日いちばん楽しかったことは?」
- 「明日はどんな日にしたい?」
成功・失敗をセットで振り返ることで、
前頭前野が“経験を再構築し、次に活かす”回路を育てます。
第4章 カラフルの支援=脳を育てる支援
カラフルの活動は、すべて“脳のトレーニング”を兼ねています。
| 活動 | 前頭前野の働き | 育つ力 |
|---|---|---|
| プログラミング | 計画・論理思考・試行錯誤 | 判断力・柔軟性 |
| デジタルイラスト | 想像・構成・感情表現 | 集中力・創造力 |
| 動画編集 | 時間管理・構成・注意持続 | 切り替え力 |
| 発表・ふりかえり | 言語化・感情調整・共感 | 自己制御・社会性 |
「遊びながら脳を使う」から、子どもたちは無理なく成長します。
そして、これらの体験が家庭での行動にも自然に広がっていくのです。
第5章 まとめ:脳を育てることは、心を育てること
集中できるようになる。
気持ちを切り替えられるようになる。
感情を言葉で伝えられるようになる。
それはすべて、「前頭前野がしなやかに働き始めた証拠」です。
カラフルの支援は、子どもが安心して挑戦できる“脳にやさしい環境づくり”。
そして家庭での声かけや習慣づくりもまた、脳を支える「日常の支援」です。
脳を育てる支援は、心を育てる支援。
子どもが「できた!」と笑顔になるたび、前頭前野は静かに、確実に育っています。