カラフル 放課後等デイサービス・日中一時支援
はじめに
子育てをしていると、「子どもにもっと自信を持ってほしい」「指示や注意ばかりで疲れる」「どうしたら自分から動く子になるのだろう」と悩む場面が多々あると思います。
その答えの一つが **「コーチング的な関わり」**です。
コーチングとは、相手に答えを押し付けるのではなく、問いかけや承認を通じて本人の内側にある考えや意欲を引き出す方法。ビジネスの世界で広まった手法ですが、近年は教育や家庭にも応用され、**「親が子どもにできる新しい関わり方」**として注目されています。
一方で、行動を強化する支援として有名なのが**ABA(応用行動分析)**です。
➡ ABAについてはこちらの記事で紹介しています。
ABAが「行動を積み上げる」支援だとすれば、コーチングは「内面を引き出す」支援。両方をバランスよく取り入れることで、子どもは「できること」と「やる気」を同時に伸ばしていけるのです。
この記事では、心理学的な根拠を交えながら、親が日常で実践できるコーチングの方法を紹介します。さらに、最後に実践シートをつけていますので、すぐに試すことができます。
コーチングとは?親子で使える理由
コーチングの定義
国際コーチング連盟(ICF)はコーチングを「思考を刺激し、創造性を引き出すパートナーシップ」と定義しています。親子関係に置き換えると、**「子どもが自分の中にある答えや可能性を見つけていくことを支援する関わり方」**になります。
なぜ家庭で役立つのか
- 自己決定理論(Deci & Ryan, 2000)
人は「関係性」「有能感」「自律性」の3つが満たされると内発的に動機づけられる、とされています。コーチングはまさにこの3要素を引き出す関わりです。 - ポジティブ心理学の知見
「強みに注目し、それを活かす」関わりは、幸福感や自己肯定感を高めることがわかっています。 - 教育実践での成果
学校教育の現場でも、ティーチング(教える)だけでなくコーチング(考えを引き出す)を取り入れることで、子どもの主体性や問題解決力が伸びると報告されています。
親が子どもにコーチングするときの基本姿勢(4本柱)

1. 傾聴(Listening)
- 子どもの話を途中で遮らず、うなずきや相槌を入れながら聞く。
- 親の意見を押し付けず「子どもの声を100%受け止める」意識を持つ。
2. 承認(Acknowledgement)
- 結果ではなく「過程」を認める。
- 例:「最後まで挑戦したね」「工夫してみたことがいいね」。
- 成長マインドセット研究(Dweck, 2006)によると、過程を認められた子どもは挑戦意欲が高まりやすい。
3. 質問(Questioning)
- 答えを与えるのではなく、考えるきっかけを与える。
- 例:「次はどうしたい?」「一番うまくいったところはどこ?」
- オープンクエスチョンを意識することで内省が深まる。
4. 伴走(Partnering)
- 失敗しても「一緒に振り返ろう」と声をかける。
- 成功体験だけでなく失敗体験から学ぶ姿勢を支える。
- 親が「評価者」ではなく「伴走者」になることで安心感が生まれる。
日常でできるコーチング実践例(小学生・1日の流れ編)
ここからは、**小学生の子どもを想定し、朝起きてから寝るまでの生活場面ごとに「NG声かけ」と「コーチング的OK声かけ」**を紹介します。実際の生活に置き換えやすい具体例なので、ぜひ今日から取り入れてみてください。
朝起きるとき
✖「早く起きなさい!遅刻するよ!」
〇「今日は何分で準備できそう?」
→ 子ども自身に見通しを立てさせることで、朝の行動が自分事になります。
朝ごはんの時間
✖「残さず全部食べなさい!」
〇「どれから食べたい?」
→ 小さな選択肢を与えることで「自分で決めたからやる」という意識が芽生えます。
登校準備
✖「忘れ物ないの?ちゃんと確認しなさい!」
〇「今日の持ち物の中で一番大事なものは何かな?」
→ 親が点検するのではなく、子どもが優先順位を考える練習に。
学校から帰宅したとき
✖「宿題やったの?」
〇「今日学校で一番楽しかったことは?」「一番大変だったことは?」
→ すぐに勉強を迫らず、まずは感情の整理を優先すると安心感につながります。
宿題タイム
✖「早く終わらせなさい!」
〇「今日はどの教科から始めたい?」
→ 選択の余地を与えることで、自分で進める力を育てます。
習い事や自由時間
✖「もっと練習しなきゃ上手くならないよ」
〇「今日やってみて一番うまくできたことは?」
→ できた部分に注目することで「次も挑戦したい」と思えるように。
夕食のとき
✖「行儀よく食べなさい!」
〇「今日のごはんで一番好きな味はどれ?」
→ 食卓を「反省の場」ではなく「会話の場」にすることで、家族関係が温かくなります。
お風呂の時間
✖「早く入りなさい、あとで冷えるでしょ!」
〇「お風呂に入ったらどんな気分になるかな?」
→ 行動の先にある感覚をイメージさせることで、主体的に動けるように。
寝る前の準備
✖「早く寝なさい、明日起きられないよ!」
〇「明日の楽しみなことは何?」
→ 明日への期待を思い出すことで、前向きに眠りにつけます。
習慣化するためのステップ
1日1回「どう思った?」を聞く
週末に「今週できたことベスト3」を振り返る
記録する(ノートやアプリ)
ジャーナリング効果により、思考の整理と自己理解が進む。
保護者がつまずきやすい落とし穴
つい口出ししてしまう → 「助言」ではなく「質問」に変える。
子どもが答えない → 無理せず「話したくなったら聞くよ」で安心を与える。
成果が見えない → 行動の変化よりも「考え方の変化」を見取る。
よくある質問(Q&A拡充版)
Q1. 子どもが質問に答えず「別に…」「わかんない」と言うときは?
👉 無理に答えを引き出そうとせず、「話したくなったら聞かせてね」と伝えるだけでOK。安心感があると、後から自分から話し出すことが多いです。
Q2. 宿題や片付けなど、やらなければいけないことは“質問”より“指示”が必要では?
👉 もちろん最低限の指示は必要です。ただし「どうしたらスムーズにできると思う?」と一度子どもに考えさせることで、同じ“やる”でも自主性が育ちます。
Q3. コーチングをしても反抗的な態度が減りません。意味がないのでは?
👉 意味はあります。反抗は「自分の意志を主張したい」というサインです。コーチングを続けると、ただの反発ではなく「自分の考えを言葉で伝える」方向に変わっていきます。
Q4. きょうだいで扱いを変えるとケンカになります。どうすれば?
👉 同じ質問を使う必要はありません。子どもの性格や年齢に合わせた問いかけをすることが大切です。「あなたはどう思う?」「弟はどう?」と、それぞれに意見を求めると安心します。
Q5. 親自身が忙しくてコーチングに時間を取れません。
👉 1日1回で十分です。例えば「寝る前に一番楽しかったことを聞く」だけでも効果があります。重要なのは“継続”です。
Q6. 効果をどうやって実感できますか?
👉 実践シートや日記に「子どもの答え」や「表情の変化」を書き留めてみましょう。数週間後に振り返ると、小さな変化が積み重なっていることに気づけます。
まとめ
- コーチングは「教える」から「引き出す」へと関わりを変える手法。
- 心理学に基づき、自己肯定感・主体性を育てる効果がある。
- 日常生活の中で問いかけを積み重ねることで、子どもの大きな成長につながる。
- ABA(行動支援)とコーチング(内面支援)を組み合わせると効果的。