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はじめに

発達に特性を持つ子どもたちにとって「見通しが持てる」「自分でできたと感じられる」環境は、とても大きな安心につながります。そのための代表的なアプローチの一つが TEACCHプログラム(EACCHと呼ばれる場合もあります) です。アメリカ・ノースカロライナ大学で発展したこのプログラムは、特に自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちへの支援として世界的に広く活用されています。

TEACCHの特徴は「構造化された環境づくり」。子どもが混乱せず、安心して活動できるように、物理的な空間・時間・活動内容を整理して示すのです。これは家庭の中でも応用可能で、生活習慣や学習、遊びの場面に取り入れることで、子どもが自分の力を発揮しやすくなります。

本記事では、家庭でできるTEACCH的支援の工夫を具体例とともに紹介していきます。


TEACCHの基本的な考え方

TEACCHの根底には「子どもの特性を理解し、環境を工夫することで行動を安定させる」という考えがあります。大人が「どうしてできないの?」と子どもを変えようとするのではなく、「どうすれば子どもが理解しやすい環境になるか」を工夫することが大切です。

TEACCHにはいくつかの柱があります。

  1. 物理的構造化
    机や家具の配置、空間の区切りを工夫する。
    →「ここは勉強する場所」「ここは遊ぶ場所」とわかるようにする。
  2. スケジュールの提示
    1日の流れや活動の順番を見える化する。
    →「次に何をするのか」が明確になることで不安を減らす。
  3. 作業システム
    課題や作業を「何を」「どのくらい」「どうやって」「終わったらどうなる」をわかりやすく提示する。
  4. 視覚的構造化
    言葉の指示だけでなく、絵カードや写真、文字を使って理解を助ける。

このような工夫を家庭に取り入れることで、子どもが「自分でできた」と実感しやすくなります。


家庭でできるTEACCH的支援

1. 家の中の空間を分ける

  • 宿題をする机には学習道具だけを置く
  • 遊ぶ場所にはおもちゃだけをまとめる
  • 食事の場には食事関連のもの以外は置かない

このように「活動ごとに場所を区切る」ことで、子どもは「今は何をする時間なのか」を理解しやすくなります。リビングの一角に勉強コーナーをつくるだけでも大きな効果があります。

2. スケジュールを見える化する

  • ホワイトボードに今日の予定を絵カードで貼る
  • 朝の身支度の流れをイラストで並べる
  • 就寝前のルーティンを写真で提示する

「今は何をしていて、次に何をするのか」が分かると、不安や抵抗が減ります。特に予定が変わるときには、事前にスケジュールを差し替えて伝えると安心につながります。

3. 作業システムの工夫

子どもに課題を出すときは、ただ「やってみて」ではなく、以下の4点を明確にします。

  1. 何をするのか(例:プリント1枚、靴を揃える)
  2. どのくらいするのか(例:10分、3問だけ)
  3. どうやってやるのか(例:順番通りに、色鉛筆で)
  4. 終わったらどうなるのか(例:シールを貼れる、遊べる)

この4つが揃っていると、子どもは「やることの全体像」が見えるため落ち着いて取り組めます。

4. 視覚的なサポート

  • 「歯磨き」の手順を絵カードにする
  • 「片付ける場所」に写真を貼る
  • 「お手伝いリスト」をイラストで示す

言葉が苦手な子でも、視覚情報があれば理解しやすくなります。家庭では写真やイラストをラミネート加工して繰り返し使うのもおすすめです。


実践例:家庭でのTEACCH活用シーン

朝の支度

  • 着替え・朝食・歯磨き・荷物準備を絵カードで並べる
  • 終わったものを裏返す仕組みにすると「できた」が可視化できる

宿題の時間

  • 学習机に「今日やるプリント」を置き、終わったら「できたボックス」に入れる
  • すぐに結果が分かる仕組みが達成感を生む

遊びの切り替え

  • 「あと5分で片付け」のカウントダウンタイマーを使う
  • 片付け場所に写真を貼り、戻すべき場所を明示する

保護者が意識するとよいポイント

  1. 子どもが混乱する要因を環境から減らす
    「注意力が続かない」「指示が通らない」などは、本人の問題だけでなく環境がわかりにくいことが原因になっていることも多いです。
  2. 大人が一貫して対応する
    親のどちらかが自由にしてしまうと、子どもは混乱します。家族全員でルールを共有しましょう。
  3. 「できた」経験を増やす
    子どもが自分で取り組み、完了できる課題を多く設定すると、自己効力感(やればできる感覚)が育ちます。

よくある課題と解決のヒント

  • 子どもがスケジュールを嫌がる
    → 最初は2~3項目だけから始め、シールやご褒美を組み合わせる。
  • 家庭での継続が大変
    → 完璧を目指さず、朝や寝る前など「ここだけは」という場面に絞って実践する。
  • 予定変更に対応できない
    → 変更カードを別に用意し、「変更」という形で提示すると理解しやすい。

まとめ

TEACCHは「子どもに合わせて環境を調整する」というシンプルで力強いアプローチです。家庭に取り入れることで、子どもが安心して生活でき、主体的に活動できる機会が増えていきます。

  • 空間を区切る
  • スケジュールを見える化する
  • 作業システムを明確にする
  • 視覚的サポートを使う

この4つを意識するだけでも、家庭の中の雰囲気はぐっと安定します。子どもが「自分でできた」と感じられる経験を積み重ねることが、将来の学習や社会生活の大きな土台になるでしょう。

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