カラフル 放課後等デイサービス・日中一時支援

はじめに

発達に特性を持つ子どもたちへの支援方法には、世界中で研究・実践されてきた多くのアプローチがあります。その中でも特に広く活用され、家庭でも取り入れやすいのが ABA(応用行動分析)TEACCHプログラム(EACCHとも表記)、そして日本で独自に整理された 太田ステージ です。

これらはそれぞれ異なる視点や手法を持っていますが、共通して「子どもを理解し、環境や関わりを工夫することで成長を支える」という考え方を基盤としています。小学生の子どもを育てる日常の中でこの3つを組み合わせて活用すると、子どもが「できた!」を増やし、自信を積み重ねながら日常生活に安心を持てるようになります。

以下では、小学生の子どもが家庭で直面しやすいシチュエーションごとに、ABA・TEACCH・太田ステージをどう組み合わせて支援できるかを具体的に紹介します。


① ABA(応用行動分析) ― 行動のしくみを理解して伸ばす

ABAの基本は「行動を観察し、その前後の関わりを調整する」ことです。

  • 強化子を使って望ましい行動を増やす(例:宿題を始めたら褒める)
  • 課題を小さく分ける(例:歯磨きをステップごとに練習する)
  • 問題行動を強化しない(例:癇癪では要求が通らないようにする)

家庭では「小さな成功をすぐに褒める」ことから始めるのがおすすめです。ABAは日常のあらゆる場面で活用できる柔軟な方法です。


② TEACCH(EACCH) ― 環境を構造化して安心をつくる

TEACCHの特徴は「環境の工夫」で、子どもが理解しやすい仕組みを整えることに重点があります。

  • 空間を区切る(学習スペースと遊びスペースを分ける)
  • スケジュールを見える化する(絵カードで1日の流れを提示)
  • 作業システムを明確にする(何を、どのくらい、どうやって、終わったらどうなるかを示す)
  • 視覚的な支援を活用する(イラストや写真で手順を提示)

家庭で取り入れると、子どもが「今は何をすればいいか」を理解しやすくなり、不安が減ります。特に予定変更や切り替えが苦手な子には大きな効果があります。


③ 太田ステージ ― 発達の段階を知り、無理のない支援を

太田ステージは「子どもの認知発達の段階」をわかりやすく整理した枠組みです。

  • ステージⅠ:感覚的な体験中心(例:隠したおもちゃを探す)
  • ステージⅡ:イメージやごっこ遊び(例:絵本や人形遊び)
  • ステージⅢ:具体的な論理的思考(例:買い物ごっこ、料理体験)
  • ステージⅣ:抽象的・仮想的思考(例:ニュースを題材に議論)

「今どの段階にいるのか」を把握することで、子どもに合わない要求を避けられます。つまり「ステージⅡにいる子に、ステージⅣの課題を押しつける」といったミスマッチを減らし、安心して学べる環境をつくることができます。


3つを組み合わせた家庭での支援のイメージ

ケース①:朝の支度が苦手で登校前にバタバタする

  • ABA
    ・「着替えができたらハイタッチ」など小さな行動ごとに褒める。
    ・ランドセルを背負ったらシールを貼る仕組みを導入。
  • TEACCH
    ・ホワイトボードに「起きる → 着替え → 朝食 → 歯磨き → 荷物準備」を絵カードで並べる。
    ・できたものは裏返して「見える達成感」を得られるようにする。
  • 太田ステージ
    ・前操作期レベルなら、口頭で「早く!」と言うより、イラストや写真で流れを提示する方が有効。

ケース②:宿題をなかなか始められない

  • ABA
    ・プリント1問ごとに「がんばったね」と声をかける。
    ・終わったら5分間ゲームタイムのご褒美を設定。
  • TEACCH
    ・宿題のプリントを「やる」箱に入れ、終わったら「できた」箱に移す。
    ・宿題の順番をカード化して「見える宿題リスト」を提示。
  • 太田ステージ
    ・具体的操作期なら、算数の文章題は実際のお金や積み木を使って理解を助けるとスムーズ。

ケース③:片付けが苦手で部屋が散らかる

  • ABA
    ・1つ片付けたら褒める。小さな達成感を積み重ねる。
    ・片付けができた後の「遊び延長」などプラスの結果を用意する。
  • TEACCH
    ・おもちゃの収納場所に写真やラベルを貼って、どこに戻すかを明確化。
    ・片付けの手順を「①ブロック → ②車 → ③ぬいぐるみ」とカード化する。
  • 太田ステージ
    ・前操作期なら「きれいにしてね」では抽象的すぎる。写真や色分けなど具体的に見せることが必要。

ケース④:癇癪を起こして気持ちをコントロールできない

  • ABA
    ・癇癪中は要求を通さない。落ち着いてから「言葉で伝えてくれてありがとう」と応じる。
    ・「言葉で言う方が得」と学習できるようにする。
  • TEACCH
    ・「気持ちカード(うれしい・悲しい・いや)」を用意し、選んで伝えられるようにする。
    ・落ち着けるスペースを家の中に作っておく。
  • 太田ステージ
    ・感覚運動的な理解レベルにいる子には、言葉での説得より抱っこやタオルケットで落ち着かせる方が効果的。

ケース⑤:ゲームやテレビをやめられない

  • ABA
    ・「あと5分」でタイマーを使い、終了したらしっかり褒める。
    ・やめられたら「次の楽しみ」につなげる。
  • TEACCH
    ・スケジュールの中に「ゲームタイム」と「終わり」を明示。
    ・「終わったら次はお風呂」とカードで見える化。
  • 太田ステージ
    ・具体的操作期なら「時間の流れ」を砂時計や時計盤で視覚化。抽象的な「あとで」では伝わりにくい。

ケース⑥:学校での出来事を話してくれない

  • ABA
    ・話したら「ありがとう、聞けてうれしい」とすぐに反応する。
    ・最初は短い報告でも強化していく。
  • TEACCH
    ・「学校であったことカード(勉強・給食・遊び・友達)」を使い、選びながら話せるようにする。
  • 太田ステージ
    ・前操作期〜具体的操作期では抽象的な「今日どうだった?」は難しい。具体的な絵やテーマを提示すると話しやすい。

ケース⑦:忘れ物が多い

太田ステージ
・具体的操作期なら、自分でチェックリストをつける体験を取り入れると次の発達段階にもつながる。

ABA
・準備ができたら褒める。忘れ物がなかった日は特別シール。

TEACCH
・ランドセルの中に「持ち物リストカード」を貼る。
・準備の流れを見える化。


3つを統合する際の保護者の心得

  1. 一貫性を持つ
    ABAでもTEACCHでも、家庭内で対応がバラバラだと効果が出にくい。家族全員でルールや関わり方を共有する。
  2. 「今の段階」を尊重する
    太田ステージの考えを取り入れ、子どもの発達に合わない課題を押しつけない。
  3. 環境を整え、褒めて伸ばす
    TEACCHで環境を整理し、ABAで成功体験を強化する。この循環が子どもの安心と成長を支える。
  4. 無理なく続ける
    すべてを完璧にやる必要はない。1日のうちの「朝の支度」「宿題」など特定の場面から取り入れてよい。

まとめ

ABA・TEACCH・太田ステージは、それぞれ異なる理論背景を持ちながら、家庭での支援に大きな力を発揮するアプローチです。

  • ABA:行動のしくみを理解し、望ましい行動を強化する
  • TEACCH:環境を構造化して安心と見通しをつくる
  • 太田ステージ:発達段階を把握し、子どもに合った支援を選ぶ

こうした小学生の日常的な場面に3つのアプローチを組み合わせると、保護者も「何をどう支援すればよいか」が見えやすくなります。家庭の中で「できた!」を積み重ねることが、子どもの自己肯定感を育て、学校生活や社会生活へとつながっていくでしょう。

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