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はじめに

子どもの発達を理解する上で、日本独自の視点から研究・整理された枠組みのひとつが 太田ステージ です。これは、発達障害を持つ子どもたちの認知的な成長段階を「見えやすい行動の特徴」として整理したものです。

もともと太田ステージは、発達心理学者ピアジェが提唱した 認知発達段階説 を基盤にしています。ピアジェは、子どもの思考が大人の未熟版ではなく、その段階特有の構造を持って発達していくことを明らかにしました。太田ステージはその理論を土台に、日本の臨床現場で発達障害のある子どもたちを観察・支援する中で再構成されたものです。

つまり太田ステージは、ピアジェ理論を「家庭や学校での支援にすぐ活かせる形」にアレンジした実践的な指標といえます。子どもを「できない」と評価するのではなく、「今はどのステージにいるのか」を把握し、そこから安心して次の発達段階へ進めるよう支援していく道しるべになります。


太田ステージの基本的な考え方

太田ステージは、子どもの認知発達を以下の段階に分けて考えます。

  1. ステージⅠ:感覚運動期レベル
    見たり触ったりする感覚的な体験を通して学ぶ段階。物の永続性(見えなくなっても存在するという理解)が十分でないこともある。
  2. ステージⅡ:前操作期レベル
    物事をイメージでとらえる力が出てくるが、論理的な思考はまだ未発達。模倣やごっこ遊びが増える時期。
  3. ステージⅢ:具体的操作期レベル
    因果関係や数量の理解など、具体的なことを論理的に考えられるようになる。ただし抽象的な概念はまだ難しい。
  4. ステージⅣ:形式的操作期レベル
    抽象的・仮想的な思考が可能になり、見えないルールや未来を想像して考えられる。

発達障害のある子どもは、このステージの進み方に凹凸があったり、特定の段階でつまずくことがあります。太田ステージを理解することで「子どもに合わない要求をしていないか?」を確認し、無理なく力を伸ばす関わり方ができます。


家庭でできる支援のポイント

ステージⅠへの支援(感覚運動期レベル)

  • 特徴:手に取ったものを振る・舐めるなど、感覚的な体験が中心。見えなくなると存在を忘れる。
  • 家庭での工夫
    • かくれんぼ遊び(布の下に隠したおもちゃを探す)
    • 音や光の出るおもちゃで因果関係を体験
    • スキンシップを通じて「安心できる環境」をつくる
  • 支援の視点:繰り返し同じ体験をすることで「物がそこに存在し続ける」という理解を促す。

ステージⅡへの支援(前操作期レベル)

  • 特徴:イメージで物事を理解するが、論理的に説明することは難しい。ごっこ遊びが広がる。
  • 家庭での工夫
    • 絵本を読むときに「これは何かな?」とやりとりする
    • おままごとや人形遊びを一緒に楽しむ
    • 視覚的なルールを提示(例:お片付けボックスに絵を貼る)
  • 支援の視点:抽象的な言葉より、具体物や絵カードを使うと理解が深まりやすい。

ステージⅢへの支援(具体的操作期レベル)

  • 特徴:因果関係や数量の理解が可能。学校の学習内容にも取り組みやすい。
  • 家庭での工夫
    • 買い物ごっこで「100円と50円で150円になる」を体験
    • ボードゲームを通じてルール理解を育む
    • 実際の料理を一緒に作り、手順を体験する
  • 支援の視点:具体物を使った活動から始めると理解しやすい。「文字だけ」「口頭だけ」で教えると難しいことがある。

ステージⅣへの支援(形式的操作期レベル)

  • 特徴:抽象的な思考が可能。「もしも~だったら」と仮説を立てられる。
  • 家庭での工夫
    • ニュースを一緒に見て意見を交換する
    • 「この問題を解決するにはどうする?」と話し合う
    • 将来の目標や進路について一緒に計画する
  • 支援の視点:対話を通じて「考える力」を育てる。本人の興味に基づいたテーマだと理解が深まる。

太田ステージを家庭で活かすメリット

  1. 子どもの「今」を正しく理解できる
    「同級生はできているのにうちの子は…」と比べて焦るのではなく、「今はこの段階にいるんだ」と冷静に見守れる。
  2. 過度な要求を避けられる
    ステージⅡにいる子にステージⅣの課題を与えると、混乱や挫折感が大きくなる。適切な課題を選べることで自己肯定感を育てられる。
  3. ステップアップの道筋が見える
    ステージごとに「次に目指す力」が見えるため、家庭での支援が計画的になる。

家庭での実践の工夫

  • 記録をつける
    どの段階の課題に取り組んだか、どこでつまずいたかを記録すると成長が見えやすい。
  • 学校や支援機関と共有する
    家庭での様子を専門職と共有することで、支援方針に一貫性が出る。
  • 「できた」を増やす
    子どもが成功体験を積みやすい課題を設定することで「やればできる」という自信をつけやすい。

よくある課題と対応のヒント

  • 兄弟との発達差に悩む
    → ステージは個人差が大きい。比較ではなく本人のペースを尊重する。
  • どのステージか判断が難しい
    → 行動の特徴を観察し、学校や専門機関に相談しながら見極める。
  • 子どもが課題を嫌がる
    → 無理に次の段階を狙うのではなく、今のステージを楽しめる活動を充実させる。

まとめ

太田ステージは「子どもを評価するためのもの」ではなく、「子どもに合った支援を見つけるための道しるべ」です。家庭で活用することで、保護者は「何を期待し、どんな支援をすればいいか」を冷静に判断できるようになります。

  • ステージⅠでは感覚的な体験を重ねる
  • ステージⅡでは具体的な遊びや視覚支援を取り入れる
  • ステージⅢでは具体物を通じて論理的理解を深める
  • ステージⅣでは対話や仮想的思考を育てる

大切なのは「今の段階を尊重する」ことです。その積み重ねが、子どもの発達を無理なく、そして豊かに支えていきます。

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