カラフル 放課後等デイサービス・日中一時支援
はじめに
子どもの発達を支える方法の一つとして注目されているのが「ABA(応用行動分析)」です。もともとは心理学の実験や研究に基づいて体系化された手法であり、自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとする子どもたちの支援に幅広く活用されています。放課後等デイサービスなど専門機関で使われるだけでなく、家庭でも取り入れることで、子どもの行動をより良い方向へと導き、日常生活に役立つスキルを自然に伸ばすことができます。
本記事では、ABAを家庭で活用する際の基本的な考え方と、実際にできる工夫や方法について詳しく解説します。
ABAの基本的な考え方
ABAは「行動」を客観的に観察し、環境との関わりを分析することで、その行動を増やしたり減らしたりするための方法です。重要なのは「子どもの意欲を引き出し、成功体験を積み重ねる」ことにあります。
ABAの基本原理は大きく3つに分けられます。
- 先行子刺激(Antecedent)
行動の直前にあるきっかけ。例:親が「片付けてね」と声をかける。 - 行動(Behavior)
子どもが実際にとった行動。例:おもちゃを片付ける/片付けない。 - 結果(Consequence)
行動の直後に起きた出来事。例:片付けたら褒められる/片付けなかったら注意される。
この流れを「ABC分析」と呼びます。家庭でも、子どもの行動が「どんなきっかけで」「どのような結果を生んでいるのか」を丁寧に観察することで、支援のヒントが得られます。
家庭で実践できるABA支援の方法

1. 褒めることを積極的に取り入れる
ABAで最も大切なのは「強化子(reinforcer)」を使って行動を増やすことです。強化子とは「子どもがうれしいと感じるもの」で、褒め言葉やスキンシップ、お菓子や遊びなどが含まれます。
- 宿題を始めたら「えらいね!」と声をかける
- 自分で靴をそろえたらハイタッチ
- おもちゃを片付けたら好きなシールを貼れる
小さな成功を見逃さず、すぐに褒めることで「またやろう」という気持ちが生まれます。
2. 課題を細かく分ける
難しい課題をそのまま提示すると、子どもにとって負担が大きく、挑戦を避けてしまうことがあります。ABAでは「シェイピング(段階づけ)」と呼ばれる方法を使い、ステップを小さくして少しずつできるようにします。
例:歯磨きを嫌がる子の場合
- まずは歯ブラシを持つだけで褒める
- 次は歯ブラシを口に当てるだけで褒める
- 少し磨けたらさらに褒める
- 最終的にすべて磨けるようにする
このように、最終ゴールまでの道のりを細分化して支援するのが効果的です。
3. 視覚的なサポートを活用する
言葉の指示だけでは理解が難しい場合、視覚的な支援を加えると行動が安定します。
- 絵カードを並べて「今日の予定」を見える化
- 片付けの場所に写真やラベルを貼る
- トイレや洗面所にイラストで手順を示す
これにより「何をすればいいか」が明確になり、子どもが安心して行動に移せます。
4. 問題行動への対応
ABAでは「好ましくない行動」への対応も大切です。ただし、罰を与えるのではなく「その行動を強化しない」ことを基本にします。
例:癇癪を起こして要求を通そうとする場合
- 癇癪の最中には要求を叶えない
- 落ち着いてから「言葉で伝えてくれてありがとう」と要求に応じる
- 結果として「癇癪よりも言葉を使う方が得をする」と学ぶ
このように「望ましい行動」を強化する流れを意識します。
家庭で続けるための工夫
- 一貫性を持つ
両親・きょうだい・祖父母など関わる大人が同じ対応をすることで、子どもが混乱せず学習しやすくなります。 - 短時間で取り組む
長時間の練習は疲れてしまうため、数分~10分程度の短い支援を積み重ねるのが効果的です。 - 日常生活に組み込む
ABAは特別な時間を設けなくても、生活のあらゆる場面で実践できます。食事、着替え、遊びなど、自然な流れの中で行動を強化していくことが大切です。 - 記録をつける
どのような行動が増えたか、どんな場面でつまずいたかを記録しておくと、支援の効果が見えやすくなります。
よくある課題と解決のヒント
- すぐに効果が出ない
→ 小さな変化を見逃さず記録し、積み重ねを大切にする。 - 子どもが飽きてしまう
→ 強化子の種類を増やし、その時々で子どもにとって魅力的なものを見つける。 - 大人の方が疲れてしまう
→ 完璧を目指さず、家庭でできる範囲で無理なく続ける。
まとめ
ABAは「褒めて伸ばす」「行動を細かく観察する」「環境を工夫する」というシンプルな原則に基づいています。家庭で取り入れる際には、完璧に実践する必要はありません。大切なのは「子どもの行動を肯定的に捉え、成功体験を積み重ねる」ことです。
日常の中で小さなステップを重ねることで、子どもは安心して行動を学び、自信を深めていきます。そしてその経験は、学校や社会生活にもつながる大切な土台となります。