カラフル 放課後等デイサービス・日中一時支援

子どもたちが「もっと安心して成長できる場所」を見つけられるように――。

発達障害のあるお子さんは、小さな不安や苦手から“心のケガ”につながることもあります。でも、親や支援者のちょっとした気づきと工夫で、お子さんは驚くほど前向きに変わっていきます。

この記事では、放課後等デイサービス「カラフル」での実践をもとに、二次障害の予防・支援のポイントと、ご家庭ですぐできる具体的な関わり方をわかりやすく紹介します。

「不安や苦手を、成長のきっかけに」
――そんな私たちの思いを、ぜひ覗いてみませんか?


  1. 二次障害とは?
    発達障害のある子どもは、感覚や考え方に個性があります。
  • 注意がそれやすい(ADHD)
  • 意図を読み取りにくい(ASD)
  • 読み書きが苦手(LD)

これらは「障害」ではなく脳の個性とも言えますが、
「なぜできないの?」と否定が続くことで「自分はダメ」「人と違う」と思い込んでしまいます。

それが続くと…

  • 気分が落ち込みやすい(抑うつ)
  • 不安が強い
  • 攻撃的・不登校など

こうした二次障害は、本人のせいではなく環境のミスマッチによる“後天的なもの”です。


  1. 二次障害のサイン

【心のサイン】

  • 無表情になる
  • 話さなくなる
  • 「どうせ無理」と言う
  • 失敗を過度に怖がる
  • 空想やゲームに没頭

【行動のサイン】

  • 予定変更が苦手
  • 怒りっぽい・泣きやすい
  • 登校や外出を嫌がる

こうした変化があれば、まずは「責めない」「否定しない」ことを徹底します。
「どうしたの?」よりも、「最近疲れている?」と共感から話しかけます。


  1. カラフル式 二次障害を防ぐ3つの柱

(1)有能感を育てる
『できた!』という小さな成功体験を積み重ねる仕組みを大切にしています。
例えばプログラミングでは「キャラクターを動かせたらOK」から始め、
少しずつ難易度を上げて達成感を重ねています。

(2)関係性の安心
否定や指導よりも、「わかるよ」「そう感じたんだね」と共感し受容すること、
課題に対し「一緒に考えよう」と寄り添うことで
「ここなら大丈夫」と思える安心感を大切にしています。

(3)自律性のサポート
「自分で決める」経験を積んでもらうために、
活動や使うアプリを自分で選んだり、発表の順番を申告したり、
日々小さな選択を応援します。
これが「自分で人生を動かせる」という自信へとつながります。


  1. 家庭でできる二次障害予防
  • 「事実+感情」で受け止める
     例:「何やってるの!」ではなく、「びっくりしたね」「悔しかったね」と伝える。
     感情に名前をつけると、脳の反応も落ち着きます。
  • 成功の再定義
     例:「最後までやったのが偉い」「途中で気持ちを切り替えたね」とプロセスを褒める。
     挑戦や努力にも意味がある、と伝えるのがポイントです。
  • 安心ルーティンを作る
     毎日のリズムを整え、特に寝る前の10分間は深呼吸・ストレッチ・今日の良かったことを話す時間に。
     心身ともにリラックスしやすくなります。

  1. カラフルでの実践例

【ケース1】「挑戦が怖い」Aくん(小4・ASD)
Aくんは、何か新しいことや難しそうな課題に対して、「失敗したくない」「やらない」と拒否することが多く、挑戦への気持ちにブレーキがかかっていました。
スタッフは、Aくんが少しでも「できた!」と感じられるように、課題を小さなステップに分けて取り組みを始めました。
最初は「開くボタンを押すだけでもOK」と、とても簡単な目標に設定。
これに成功すると、Aくんは「それならやれる!」と安心した表情に。
続けて「画像を選ぶ」「図形を動かしてみる」と、次の小さな課題も一緒にクリアしていきました。
その度にスタッフは「押せたね」「選べたね、すごい!」と声をかけ、Aくん自身も「やってみる」に前向きな気持ちが少しずつ育っていきました。
こうした積み重ねで「失敗=怖い」から「できた=うれしい!」に気持ちが切り替わり、
最近では「次のランクに挑戦したい!」と自分から新しい課題に向かう姿勢が見られるようになりました。

【ケース2】「怒りが爆発する」Bくん(中1・ADHD)
Bくんは、思い通りにいかないことがあると、感情のコントロールが難しくなり、物を投げてしまうことがありました。
スタッフは、Bくんの「怒り」に寄り添いながら、一緒に「怒りの温度計」を作成しました。
まず、自分の気持ちを「0~5」の段階で数値化する方法を説明し、
「いまはどれくらい?」とBくん自身に意識してもらう練習を繰り返しました。
「3を超えたら一度深呼吸」「4まで上がったら5分間、その場を離れてクールダウン」といった“自分で選べる”ルールを作り、怒りが高まったときに実行できる環境も整えました。
はじめは「わかんない」と言っていたBくんも、慣れてくると「いま3くらい」と気持ちを表現できるようになり、
自分で離れたり深呼吸したりすることで、感情の爆発を未然に防ぐことが増えました。
そんなBくんの姿を見て、スタッフや周囲も「落ち着ける方法を分かってきたね」「自分で気持ちが伝えられて偉いね」と声をかけ、Bくんにとって安心できる環境が広がっています。

【ケース3】自信をなくしたCちゃん(小6・LD)
Cちゃんは漢字がとても苦手で、「どうせムリ」とあきらめがちでした。
そこでスタッフは、“動画編集で使う字幕(テロップ)を作成する役割”をお願いしました。
はじめは、
「パソコンならできそう!」
「動画に文字を入れるのって面白いね」
と、Cちゃんの好きなデジタル作業からスタートしました。
スタッフと一緒に、「どんな言葉を入れる?」と話し合いながら、一文字ずつ漢字やひらがなを入力。
わからない字は自分から「これってどう書くの?」と質問するようになり、
入力ミスも「編集だから直せるね!」と前向きにリトライ。
何度も字幕作業を続けるうちに、
「字を入れるの楽しい!」「次はもっと難しい漢字にも挑戦したい」と、自然と文字への関心と自信が育ちました。
苦手だった漢字も、「動画作り」という楽しさの中で触れることで、失敗や不安より「できた!」の経験が増えていきました。


  1. 支援者にできること
    評価より理解。「なぜできない?」ではなく「どうすればできる?」
    問題行動もSOSのサインとして受け止めます。
    家庭・学校・放デイが連携し「誰もひとりにしない支援」を実現します。

  1. まとめ
    二次障害は目に見えにくい“心のケガ”ですが、早めのケアでしっかり予防できます。
    カラフルは「できる喜び」「受け入れられる安心」「自分で選ぶ自由」を大切にし、
    子どもたちの「自分らしく生きる力」を育てています。

【参考文献】
Deci, E.L., & Ryan, R.M. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist.
文部科学省『発達障害のある子どもへの支援の充実に向けて』(2022)
中野尚彦『発達障害と二次障害の理解と支援』(金剛出版, 2019)
日本発達心理学会 編『子どもの発達と支援』(北大路書房, 2021)

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